企画展

愛知県美術館リニューアル・オープン記念 全館コレクション企画 アイチアートクロニクル1919-2019

Grand Reopening Exhibition: Aichi Art Chronicle 1919-2019

 愛知県美術館は、2019年4月にいよいよ全館リニューアル・オープンを迎えます。そのちょうど100年前の1919年、東京の洋画グループ「草土社」に触発されて、愛知に暮らす10代20代の若者たちが一つの展覧会を開催しました。「愛美社」と名付けられたこのグループは、中央から強い影響を受けながらも、ここ愛知に軸足を置いて活動を展開します。本展は、この1919年を起点として、20-30年代の洋画壇やアヴァンギャルドの活発な活動、40-50年代の混乱と復興、60-70年代の反芸術やオフ・ミュージアムの傾向、80-90年代の現代美術を扱うギャラリーの増加、そして2000-10年代の官主導の公募展や芸術祭の隆盛にいたるまでの100年のあいだに、愛知の前衛的なアートシーンを様々なかたちで揺り動かしてきたムーブメントや事件を辿る企画です。愛知のアートの渦巻くような熱量を、愛知県美術館、名古屋市美術館、豊田市美術館をはじめとする地域のコレクションを通じてご紹介します。

基本情報

[会期]

2019年4月2日(火)〜6月23日(日)

[会場]

愛知県美術館(愛知芸術文化センター10階)

[開館時間]

10:00〜18:00
金曜日は20:00まで(入館は閉館の30分前まで)

[休館日]

毎週月曜日(ただし4月29日[月・祝]、5月6日[月・振]は開館)、5月7日(火)

[観覧料]

一般 500(400)円
高校・大学生 300(240)円
中学生以下無料
※( )内は20名以上の団体料金

[主催等]

[主催] 愛知県美術館

[特別協力] 名古屋市美術館

展示替え情報

期間中、一部作品の展示替えを行います。

出品作家(予定)

青田真也、秋吉風人、浅井忠、あさいますお、浅野弥衛、味岡伸太郎、有馬かおる、安藤邦衛、安藤正子、安藤幹衛、猪飼重明、イケムラレイコ、市野長之介、伊藤髙義、伊藤利彦、伊藤敏博、伊藤廉、稲葉桂、今村文、岩田信市、魚津良吉、臼井薫、大﨑のぶゆき、大沢海蔵、大沢鉦一郎、太田三郎、大塚泰子、岡田徹、荻須高徳、小栗沙弥子、尾沢辰夫、加藤靑山、加藤静児、加藤延三、加藤マンヤ、川口弘太郎、河本五郎、岸田劉生、岸本清子、北川民次、北脇昇、鬼頭甕二郎、鬼頭健吾、鬼頭鍋三郎、木村充伯、河野通勢、久野真、久野利博、熊谷守一、倉地比沙支、栗本百合子、栗木義夫、黒田清輝、鯉江良二、河野次郎、小杉滋樹、後藤敬一郎、小林耕平、小林孝亘、斉と公平太、坂井範一、坂本夏子、佐藤克久、佐分眞、沢居曜子、設楽知昭、島田卓二、下郷羊雄、庄司達、白木正一、杉戸洋、杉本健吉、鈴木不知、清野祥一、関智生、ゼロ次元、染谷亜里可、竹田大助、田島二男、田島秀彦、辰野登恵子、東郷青児、東松照明、徳冨満、戸谷成雄、登山博文、中條直人、中野安次郎、奈良美智、西村千太郎、額田宣彦、野崎華年、野水信、長谷川繁、原裕治、櫃田伸也、平川祐樹、古池大介、ぷろだくしょん我S、堀尾実、眞島建三、松下春雄、三岸好太郎、三岸節子、水谷勇夫、宮脇晴、村瀬恭子、村松乙彦、森北伸、森眞吾、八島正明、矢橋六郎、山口勝弘、山下拓也、山田彊一、山田純嗣、山田睦三郎、山本悍右、山本高之、山本富章、横井礼以、吉川家永、吉川三伸、吉本作次、渡辺英司ほか

見どころ

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愛美社とサンサシオン:1919年~1920年代

大沢鉦一郎(1893-1973)を中心とする洋画グループ「愛美社」が1919年に開催した第1回展は、愛知における作家の自主的なグループ展の先駆けと言えます。反・官展の態度を鮮明にした愛美社の活動は長くは続かず、続いて登場した鬼頭鍋三郎(1899-1982)らの洋画グループ「サンサシオン」は、むしろ官展系のアカデミックな表現を愛知に引き込むことを目指し、1923年から33年まで10回の展覧会を開催しました。その間、官展に反旗を翻した二科会の流れを汲む「緑ヶ丘中央洋画研究所」、「フォーヴ美術協会」、「美術新選手」といった洋画グループが次々と誕生し、愛知の洋画壇は群雄割拠の時代に突入します。

 

 

 

大沢鉦一郎《大曽根風景》1919年 油彩、キャンバス 愛知県美術館


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シュルレアリスムの名古屋:1930~40年代

1930年代の名古屋をシュルレアリスムの一大拠点へと変貌せしめたのは、詩人・山中散生(1905-1977)と画家・下郷羊雄(1907-1981)によるいち早い海外の動向の紹介でした。山中は、フランスのシュルレアリストとの文通によって集めた作品・資料を国内5カ所に巡回させる「海外超現実主義作品展」を、1937年、美術評論家の瀧口修造と共同で実現します。海外の美術雑誌を豊富に取り揃える下郷のアトリエを溜まり場としていた若い美術家たちは、この展覧会に触発されて一致団結、「ナゴヤアバンガルドクラブ」を結成します。

 

 

 

吉川三伸《葉に因る絵画》1940年 油彩、キャンバス 名古屋市美術館


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非常時・愛知:1940~50年代

戦時色が濃くなるにつれて、美術界でも前衛的な表現が弾圧、あるいは自粛される一方で、いわゆる「戦争画」の展覧会は盛んに開催され、多くの人で賑わいます。画材の配給制も敷かれ、多くの美術家たちが体制への協力を余儀なくされました。しかし、いずれの表現も1945年の度重なる空襲によりおしなべて失われ、その具体的な検証を難しくしています。戦後、わずか1年足らずで県下の美術家が大同団結して結成した「中部日本美術協会」は、良くも悪くも統一的な主張を持たず、穏健な作風から異端と呼ばれるようなものまで、幅広い表現の受け皿として機能しました。同会は、1955年の愛知県文化会館美術館での開館記念展を最後に、その役目を終えます。

 

 

 

北川民次《砂の工場》1959年 油彩、キャンバス 愛知県美術館


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日本画と前衛:1950~1960年代

「中部日本美術協会」の日本画部は、第3回展以降、出品規定から画材の制限を外します。この異例の措置は、星野真吾(1923-1997)や堀尾実(1910-1973)らの多様な画材を用いた実験的な日本画をも許容するものでした。第4回展からは戦前のシュルレアリスムの流れを汲む美術文化協会の作家たちが参加し、抽象表現を含めさらに前衛的な傾向は強まります。その美術文化協会が中央と地方の権力争いによって分裂すると、堀尾は竹田大助(1927-2008)らと小グループ「匹亞会」を立ち上げ、反・画壇で無所属の立場を鮮明にします。先鋭的な美術の活動の場が、画壇から次第に個人へと重心を移してゆく転換点を、このあたりの動きに見ることもできるでしょう。

 

 

竹田大助《牧神の朝》1953年 油彩、キャンバス 愛知県美術館


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美術家たちの集団行動:1960~70年代

愛知の前衛として知られるゼロ次元やぷろだくしょん我Sは、意外にも(?)愛知県文化会館美術館を主な発表の場としていました。1960年代の愛知には、桜画廊など一部のギャラリーを除けば、若い美術家らが借りられる展示スペースは決して多くなく、必然的に彼らは活動を屋外へと広げざるを得ませんでした。長良川河畔でのハプニング、伏見通りや白川公園での野外彫刻展、自宅や映画館でのインスタレーション、あるいは裁判や選挙を利用したパフォーマンスなど、美術館やギャラリーを飛び出した若者たちの多岐に渡る活動の背景には、そんな事情も見え隠れしています。

 

 

ぷろだくしょん我S《人形参院選》1974年 空気人形 名古屋市美術館


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現代美術の名古屋:1980~90年代

名古屋の現代美術シーンを牽引したのは、海外の美術動向を素早くキャッチして紹介するギャラリーの活発な動きと、それに敏感に反応したコレクターたちでした。またこの時期中部圏には次々と公立美術館がオープンし、現代美術のキュレーションも行うようになります。ギャラリー、行政、研究者、企業、そして美術家らがそれぞれに展開した活動は、次第に結びつきを強め、産業技術振興を視野に入れた「名古屋国際ビエンナーレ・ARTEC」(1989年~1997年)や、地域活性化と連動した「アートポート」(1999年~2003年)のような、大規模なアートイベントへと発展していきます。

 

 

 

吉本作次《中断された眠りII》1985年 ハウスペイント・クレヨン・土・コラージュ、キャンバス 愛知県美術館


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アーティスト・ラン・スペースとトリエンナーレ:2000~2010年代

2000年代に入ると、全国的に美術家が滞在制作するためのレジデンス施設が盛んに作られるようになりますが、愛知県下では目立った動きは少なく、代わりに居場所を求めた美術家たちが自主的に運営するアーティスト・ラン・スペースが、次々と誕生しました。同時に、行政主導の公募展や地域のまちづくりと連動したアート・プロジェクトも増加の一途をたどります。2010年からは、3年ごとに開催される国際芸術祭「あいちトリエンナーレ」が始まり、回を重ねるごとに名古屋、岡崎、豊橋、そして次回は豊田へと、エリアを拡大しています。

 

 

 

村瀬恭子《Watering Place》2008年 油彩・色鉛筆、綿布 豊田市美術館

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