館長メッセージ

ごあいさつ

愛知県美術館は、1992年(平成4年)10月に愛知芸術文化センターとともに開館し、2017年(平成29年)に開館25周年を迎えました。そして、同年11月末からは、これからも多くの方々に、末永く安心して美術館を利用していただけるようにと、天井の改修、照明のLED化、展示室の壁面・床面の張替えや塗装を含む、初めての大規模改修工事を実施いたしました。これにともない、8階ギャラリーは昨年(2018年)11月まで、10階美術館は本年(2019年)3月まで、休館いたしておりましたが、このたびようやく、全館そろってのリニューアル開館――第二の開館を迎えました。

開館以来最初の25年間に、愛知県美術館は、110本以上の企画展を開催し、コレクション展、ギャラリーを合わせた総入場者数は、のべ約2300万人に達しました。これほど多くの観客の皆さまに親しまれてきたことは、美術館にとって大きな喜びであり、また誇りとするところです。

また、開館当初に約3000件を数えたコレクションは、約8000件と、二倍以上に増えました。これには、愛知県内外の多くの企業・個人の皆さまからのご寄附・ご寄贈が、大きく与っております。充実したコレクションこそが美術館活動の基盤であり、活発な調査研究や展覧会の開催を可能にする――愛知県美術館は、このようなきわめて正当な考え方に基づいて、開館以前から優れたコレクションの構築に努めてきましたし、そのような姿勢が皆さまのご賛同を得て、寄附金や作品寄贈に結実したものと確信しております。ご寄附・ご寄贈いただいた皆様には、この場を借りてあらためて御礼申し上げます。

このような活動の蓄積は、美術館の性格を少しずつ変化させてきました。それを象徴的に示しているのが、2002年から数回に分けて受贈した、総数3000点を超える「木村定三コレクション」と、2010年の第一回以降、毎回、国際現代美術展の主会場となってきた「あいちトリエンナーレ」です。モダン・アートを主な活動領域とする美術館から、総合的な美術館へと、愛知県美術館は成長・発展してきたのです。

一方、この25年の間に、日本の社会は、バブル経済の崩壊やリーマンショック、また阪神淡路大震災と東日本大震災をはじめとする大規模な天災など、大きな変動に見舞われてきました。グローバリゼーションや少子高齢化社会の到来は、先立つ世代がこれまでに経験したことのない次元のものと言えるでしょう。また、科学技術の進展によるIT革命は、あらゆる面において私たちの生活を変えてきましたし、そのスピードは加速しています。

このような変化の中で、美術館に求められる役割や機能、そして価値も、変化しています。それは、一面では美術自体の変化に起因するものであり、また他方、社会のなかでの美術や美術館の意味の変化に由来するものもあります。現代の美術館は、文化や伝統を守り、次の世代に引き継ぎながら、同時に新しい価値を創造し、定義していくという、困難な課題を、与えられていると言えるのではないでしょうか。

リニューアルを機に、愛知県美術館は、新しい時代に一歩足を踏み出します。新しい目で過去を振り返ることによって、未来への展望を開くことを目指し、リニューアルを記念する全館コレクション企画として開催するのが、「アイチアートクロニクル1919-2019」展です。東京と関西という二つの極に対し、第三の中心として常に豊かな逸脱を内在させていたこの地域の、比類のない美術の展開を知る、またとない機会となることでしょう。

夏期には、4回目となる「あいちトリエンナーレ2019」が、ジャーナリスト/メディア・アクティビストの津田大介氏を芸術監督に迎え、「情の時代Taming Y/Our Passion」をテーマに、8階と10階のすべての展示室において開催されます。そこには、「情報によって我々の感情が煽られ、それによって翻弄された人達が、今世界中で分断を起こしている。アートの持つ力で、人々の情けに訴えることによって、問題解決の糸口を探っていきたい」という思いが込められています。

続く「地球・爆」展は、1960年代日本のポップ・アートを代表する画家・岡本信治郎(1933生)の呼び掛けで開始された10人の画家による一大プロジェクトで、「あいちトリエンナーレ2013」でその一部が紹介されたものです。完成した全長200メートル、約50点からなる絵画連作の完全公開は、今回が初の機会となります。

2020年の年始早々に開会する「コート―ルド美術館展」は、印象派・ポスト印象派の名品を多数所蔵することで名高いロンドンの美術館のコレクションを、エドゥアール・マネ《フォリー=ベルジェールのバー》、ピエール=オーギュスト・ルノワール《桟敷席》、ポール・セザンヌ《カード遊びをする人々》をはじめとする、約60点の選りすぐりの名品によって紹介する展覧会です。

以上が、本年度の企画展ラインナップのあらましですが、新しい美術の展開とともに、社会と美術のかかわりを見つめ、また過去の美術に対しても、常に新しいまなざしを注ぐ、愛知県美術館ならではの姿勢が表れた展覧会プログラムをご提供できるものと自負しております。また、企画展と併せて、清新なテーマによるコレクション展や教育普及、映像事業などの多様な活動も、続けていく予定です。世界の情報化、ヴァーチャル化が進行する中で、リアルな「もの」や人の存在感を感じ取ることができる美術館という場は、ますます重要になっているのではないでしょうか。魅力的な美術館の実現を目指して、私たち職員一同は、努力を続けていく所存です。より一層のご支援、ご協力をお願いする次第です。

愛知県美術館
館長  南 雄介