企画展

没後20年 香月泰男展 透明な抒情と鎮魂の詩

KAZUKI YASUO Retrospective

香月泰男が1974年に生地の山口県三隅町で62歳の若さで没してから本年で20年の歳月が流れました。1911年、日本海に面した三隅町で代々医を業とする旧家に生まれた香月泰男は、幼くして父母に去られ祖父母のもとで少年期をおくるなかで、自らその孤独を癒すかのように絵に熱中するようになります。山口県立大津中学を卒業すると、東京美術学校に進んで画家への道を歩み始め、卒業後は美術教師のかたわら国画会や文展に出品を重ね、1939年には新鮮な造形感覚を示す「兎」で文展特選を受賞するなど、着実に画家としての地歩を固めていきました。しかし、1942年末に召集を受け翌年4月には一兵卒として満州(現中国東北部)に送られ、画家としての仕事は中断を余儀なくされます。終戦後はシベリヤに抑留され、厳寒の地で二冬を過ごし、1947年に帰還します。しかし、この極限状況のなかでも画家の眼を失うことなく、後に<シベリヤ・シリーズ>に結実するモチーフを、従軍中も俘虜となっても身辺においた絵画箱に文字にかえて刻んでいます。帰国後しばらくは、出征前にすでに確立しつつあった、うるわしい色彩と特異な画面構成によるモダニズム様式を追及し、少年の日々を回想するかのような、静寂にみちた抒情的作品を国画会に出品しています。1950年代後半に入って次第にその朔風は変化を示し、方解末を用いた独特の絵肌にモノクロームで形象がおかれるようになります。この様式、技法の深まりのなかで長く胸中にあった<シベリヤ>がその姿をあらわし、出征から帰還までの<シベリヤ・シリーズ>として、結実していくことになります。それは画家個人の記録をこえて、歴史によって強制的に極限状況におかれた多くの人々の魂の記録ともなっていると言えましょう。一方でまた画家は深く家族や郷里の風土を愛し、それらを主題に詩心にみちた作品をのこしました。今回の展覧会は、こうした香月泰男の、初期から晩年にいたる多彩な作品世界を、没後20年を機にその代表作によって辿り、その淵源をいま一度検証しようとするものです。

基本情報

[会期]
1994年11月18日(金)~1995年1月16日(月)
[会場]
愛知県美術館(愛知芸術文化センター10階)
[開館時間]
10:00~18:00
金曜日は20:00まで(入館は閉館の30分前まで)
[休館日]
毎週月曜日、12月28日(水)~1月3日(火)
[観覧料]

一般 800(600)円
高校・大学生 600(400)円
小・中学生 300(200)円
※()内は20名以上の団体料金

[主催等]

[主催] 愛知県美術館、日本経済新聞社、テレビ愛知

[協力] 山口県立美術館、三隅町立香月美術館

[協賛] 中部電力、東邦ガス、トヨタ自動車、名古屋鉄道

[後援] 愛知県・岐阜県・三重県・名古屋市教育委員会

見どころ

図録

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香月泰男展

編集:牧野研一郎(愛知県美術館)、古田浩俊(愛知県美術館)
翻訳:勝矢桂子
表紙デザイン:岡本滋夫
制作:印象社
発行:日本経済新聞社
1994年11月
著作権者:愛知県美術館、日本経済新聞社

「シベリア・シリーズと初期作品─香月泰男展に寄せて─」浅野徹 愛知県美術館館長

The Siberia Series and the Early Works─On the Kazuki Yasuo Retrospective
 Toru Asano Director, Aichi Prefectural Museum of Art
「香月泰男初期作品の成立に関する試論」牧野研一郎 愛知限美術館主任学芸員
「香月泰男の造形的模索─1950年代の作品を中心に─」濱本聰 下関市立芙術館学芸員
「香月泰男の‘‘シベリア・シリーズ”にみる『単純化』と『装飾化』」冨田章 そごう美術館主任学芸員

図版
第1 章:様式の探求(1933-1939)
第2 章:透明な抒情からカーボン・エポックヘ(1940-1959)
第3 章:シベリア・シリーズ
第4 章:小さな世界
第5 章:後期作品(1960-1974)

「解説」牧野研一郎
「画家香月泰男に寄り添って」香月婦美子 聞き手:木本信昭 下関市立美術館副館長

出品目録

「年譜」牧野研一郎編
「展覧会歴」古田浩俊編 愛知県美術館学芸員
「文献目録」古田浩俊編




Kazuki Yasuo Retrospective
Edited by Kenichiro Makino (Aichi Prefectural Museum of Art) / Hirotoshi Furuta (Aichi Prefectural Museum of Art)
Translated by Keiko Katsuya
Cover Design by Sigeo Okamoto
Produced by Insho-sha, Tokyo
Published by Nihon Keizai Shimbun, Inc.

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