映像プログラム

第27回アートフィルム・フェスティバル

The 27th Art Film Festival

クリヨウジ『AU FOU! (殺人狂時代)』(カラー版) 1967年

 「アートフィルム・フェスティバル」は、実験映画やビデオ・アート、ドキュメンタリー、フィクション等のジャンル区分にとらわれず、独自の視点からプログラムを構成する特集上映会です。

 今回特集するクリヨウジ(2016年、久里洋二からカタカナ表記に変更)は、1928年福井県鯖江市生まれの漫画家、アニメーション作家です。デザイナーの柳原良平、イラストレーターの真鍋博とともに結成した「アニメーション三人の会」により、1960年草月アートセンターで開催した「三人のアニメーション」は、今日アート・アニメーションと呼ばれる動向の、日本における先駆けと言えるものでした。本特集では、アニメーションの枠組みから一歩踏み出し、映画という観点からクリの仕事を見つめ直してみたいと思います。

 また、愛知芸術文化センター・愛知県美術館オリジナル映像作品最新第31作として完成した清原惟監督『A Window of Memories(2023)を初公開いたします

基本情報

[会期]

2023年10月21日(土)~11月1日(水)

[会場]

愛知芸術文化センター12階
アートスペースA
(定員:180名)

[休館日]

毎週月曜日

[観覧料]

無料

[主催等]

[主催] 愛知県美術館

見どころ

■特集:映画作家・クリヨウジ

 今回特集するクリヨウジ(2016年、久里洋二からカタカナ表記に変更)は、1928年福井県鯖江市生まれの漫画家、アニメーション作家です。デザイナーの柳原良平、イラストレーターの真鍋博とともに結成した「アニメーション三人の会」により、1960年草月アートセンターで開催した「三人のアニメーション」は、今日アート・アニメーションと呼ばれる動向の、日本における先駆けと言えるものでした。当時一般的だった「漫画映画」が、今、「アニメ」という略語を含めて置き換わってしまった状況を思えば、それがいかに革命的であり、インパクトのあるものであったか、実体験のない者にも想像できるのではないでしょうか。クリの映像領域における活動はアニメーションに留まるものではありません。それを象徴的に示すのが1973年に手掛けた『芸術と生活と意見』シリーズで、前衛的、実験的志向の美術家たちを対象としたアート・ドキュメンタリーです。これも類例のない画期的な仕事と呼べるでしょう。クリのアニメーションといえば、まずドローイングを思い浮かべますが、ほかにもフィルムに直接傷をつけて描くキネカリグラフィーや、人間や物体をオブジェ的に使ったピクシレーション、ヤン・シュワンクマイエルを想起させるコラージュ等、実に多彩な手法が用いられているのも特徴です。本特集では、アニメーションの枠組みから一歩踏み出し、映画という観点からクリの仕事を見つめ直してみたいと思います。

 また『芸術と生活と意見』上映にちなみ、ナム・ジュン・パイクやジョナス・メカスらが手掛けたドキュメンタリー志向の作品も上映します。合わせてお楽しみください。

○作品提供:久里実験漫画工房

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クリヨウジ『AU FOU! (殺人狂時代)』(カラー版) 1967年




■愛知芸術文化センター・愛知県美術館オリジナル映像作品第31

 清原惟(ゆい)監督『A Window of Memories』初公開

 愛知芸術文化センターでは開館した1992年から、一年一本のペースにより、「身体」をテーマとした実験的な映像作品の委託制作を続けています。その最新第31作として完成し、今回初公開されるのが清原惟監督『A Window of Memories(2023)です。この作品は監督の清原が、人間には父方と母方の双方に祖母が存在することに着目したことが起点となっています。二人の祖母にはそれぞれの人生があり、そこで培われていった体験が蓄積されています。彼女ら二人は、多くの人が知る著名人でもなければ、特別な事件や出来事に当事者として関わった訳でもありません。いわば市井の人として暮らしてきたのですが、清原監督はその声に耳を傾け、それらをかけがえのないものとして慈しむように記録してゆきます。

 清原惟は初長編の『わたしたちの家』(2017)と、これに続く『すべての夜を思いだす』(2023)2本が、ともに「ベルリン国際映画祭」に出品され、注目を集める若手映画監督です。これまでの作品は劇映画の領域に分類されますが、『A Window of Memories』は彼女が初めてドキュメンタリーの領域に踏み込んだ作品です。しかし、単純な記録としてのそれに留まらず、採取した祖母たちの言葉を2人の俳優に、演劇のリーディングを思わせるアプローチで朗読させてもいるのです。そして、この作品はこの二つの領域をたゆたうように、自在に行き来して進行するのです。

 この作品に合わせジョナス・メカスやビル・ヴィオラらが自身の母親を含む家族を撮った作品も上映します。映像で描く家族という表現の奥深さに触れられるでしょう。

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清原惟『A Window of Memories』2023年