映像プログラム
第25回アートフィルム・フェスティバル
The 25th Art Film Festival
特集 映画の声を聴く
「アートフィルム・フェスティバル」は、実験映画やビデオ・アート、ドキュメンタリー、フィクション等、従来のジャンル区分を越えて、独自の視点からプログラムを構成する特集上映会です。
特集テーマは「映画の声を聴く」。1895年に誕生した映画は、音声を伴わないサイレントの表現として始まりました。今日私たちが親しんでいる、映像と音がシンクロした映画が成立するのは1930年代以降ですが、まだサイレント映画の1920年代に、映画は既に第一の黄金時代を迎えています。そのため映画ファンの中には、音声をあまり重視しない向きもありますが、一方でジョナス・メカスの日記映画やクリス・マルケルのエッセイ・フィルムのように、極めて独特で印象的なナレーションの作品もまた存在します。彼らから章梦奇(ジャン・モンチー)ら近年の注目すべき作家までを取り上げ、音声表現の魅力を持つ映画の系譜をたどります。
また小特集として、令和元年度に愛知県美術館が『アニムス Part1』『同 Part2』(1982年)を収蔵した、日本における先駆的な映像作家でビデオ・アーティストの一人である出光真子のプログラムや、戦中から1990年代までドキュメンタリーの分野で活動した野田真吉が、名古屋在住の画家・水谷勇夫の「凍結絵画」制作の過程を記録した『水谷勇夫の十界彷徨』(1984年)を上映します。本作品は完成当時、限られた形でしか上映されておらず、極めて貴重な鑑賞機会となるでしょう。
基本情報
- [会期]
2021年10月20日(水)~10月31日(日)
- [会場]
アートスペースA(愛知芸術文化センター12階)
定員90名- [休館日]
10月25日(月)
- [観覧料]
無料
- [主催等]
[主催] 愛知県美術館
見どころ
小特集1 水谷勇夫の映像世界
愛知を拠点に活動した画家・水谷勇夫(1922-2005年)は、美術に留まらず、公演芸術や映画、民俗学研究など、複数の領域と関わりを持つ、マルチ・アーティスト的存在でした。昨年、当館で「小企画 水谷勇夫と舞踏」展を行い、土方巽、大野一雄らの舞踏家との交流にフォーカスしました。本上映会では、日本におけるドキュメンタリー映画のパイオニアの一人で『マリン・スノー──石油の起源』(1960年)などの作品 で知られる野田真吉(1911-1993年)が監督した、『水谷勇夫の十界彷徨』(1984年)に焦点を当てます。当時、水谷が試みていた「凍結絵画」の制作過程を記録した本作は、映画完成の年に開催された「水谷勇夫展 十界之内 蠅と食卓」(於:日本画廊、東京)で上映されました。その後は正確な記録がないため不明ですが、ほとんど上映されておらず、本上映会は貴重な鑑賞機会となるでしょう。本編に使われなかった「アウトテイク」の上映や、水谷勇夫のご子息でアーティストの水谷イズルを招き講演を行い、この作品の謎に迫ります。
野田真吉『水谷勇夫の十界彷徨』(1984年)制作風景
(野田監督は右から3人目。写真提供:水谷イズル)
小特集2 出光真子の実験映画とビデオ・アート
令和元年度に当館が『アニムス Part1』『同 Part2』(1982年)を収蔵した出光真子は、日本における先駆的な映像作家でビデオ・アーティストの一人として評価されています。彼女は、実験映画では繊細な感性で光をとらえた美しい映像が、ビデオ・アートでは画面内にモニターを設置し、登場人物とモニター内の映像が相互に関連づけられる独自の「マコ・スタイル」と呼ばれる表現が知られています。しかし彼女の映像表現は、フィルムとビデオで二つのスタイルが並走していたとは言い切れず、フィルム作品『At Any Place 4 ヨネヤマ・ママコ「主婦のタンゴ」より』(1978年)が、人物を合成する手法において『アニムス』との関連を見せるといった、 相互的な関係を認められるのです。本プログラムが、フィルムとビデオの垣根を越えた、新しい作家像を見出す契機となれば幸いです。なお当センターでの出光作品のまとまった上映は、開館記念事業の上映会「家族の映像」(1992年)以来となります。
出光真子『アニムス Part1』1982年
愛知県図書館チャンネル:文化芸術に関する連続講座 第2回
※公開を終了しました