企画展

富岡鉄斎展──理想郷を語る──

TOMIOKA TESSAI RETROSPECTIVE

 富岡鉄斎(1836-1924)は、古今和漢の深い学識を背景に、流派を問わず広く古画から学びつつ、斬新な構図や鮮烈な色彩感覚、重厚で緻密な造形力などによって、深遠な理想郷を描き出した作家として知られています。

 とくに、人間性や自然の実在感に対する本質的な追求をしたその姿勢は<最後の文人画家>と呼ばれるにふさわしく、また国内のみに留まらず海外においても、日本の近代美術を代表する画家として高い評価を受けています。鉄斎の生きた時代は、幕末から明治、大正と、ちょうどわが国の近代化の展開期であり、日本の絵画は西洋絵画の影響を強く受けながら歩み始めていました。そうしたなか鉄斎は「万巻の書を読み万里の路を行く」という中国の画家董其昌の言葉を実践することによって自らの画境を開きました。それは、固定化した伝統や世俗の流れにとらわれることのない自由な精神によって、理想の世界を誰にでも親しみやすく、実在感豊かに語りかけるものでした。そして、西洋化・近代化の渦に呑み込まれることなく独自の世界を形成した鉄斎の芸術は、<日本の絵画とは何か>とあらためて問い直されている今日においても新たな関心が寄せられるところで、現代から未来へと新鮮な輝きを放ち続けることでしょう。

 この展覧会は、鉄斎作品の収集と研究・顕彰活動で知られる清荒神清澄寺をはじめ、国公私立の博物館や美術館、寺院や個人所蔵家等からご協力を賜り、屏風・掛軸・扇面・巻子・画帖などの名品約160点を、特色のある幾つかの主題に分けてご紹介するものです。例えば山水画では旅人としての鉄斎の心の反映した、富士山や妙義山・瀞八丁などの「真景」、脱俗の生活を希求した「憧憬」、理想郷や神話の世界に心を遊ばせた「仙境」。人物画では鉄斎がとくに私淑した中国の文人画家蘇東坡や阿倍仲麻呂などの「故事」や人間味漂う十六羅漢などの「神仙図」など、また色彩と生命感にあふれる花卉鳥獣画と、鉄斎の幅広い世界観とその芸術の魅力を感じていただけるような構成となっています。

基本情報

[会期]

1996年9月27日(金)~1996年11月10日(日)

[会場]

愛知県美術館(愛知芸術文化センター10階)

[開館時間]

10:00~18:00
金曜日は20:00まで (入館は閉館の30分前まで)

[休館日]

毎週月曜日(ただし11月4日[月・振]は開館)、11月5日(火)

[観覧料]

一般 1,000(800)円
高校・大学生 700(500)円
小・中学生 400(200)円
※()内は20名以上の団体料金

[主催等]

[主催] 愛知県美術館、中日新聞社、中部日本放送

[企画協力] 鉄斎美術館

[後援] 愛知県・岐阜県・三重県・名古屋市各教育委員会、JR東海

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