企画展

田中恭吉展

Tanaka Kyokichi

 『月映(つくはえ)』という詩と版画の雑誌をご存じでしょうか。この雑誌は、1914(大正3)年から1915年にかけて、東京美術学校に在籍していた三人の画学生によって出版されたものです。田中恭吉、恩地孝四郎、藤森静雄の三人は、深い友情の絆で結ばれ、互いに励ましあいながら『月映』の出版に取り組みました。彼らはまず私家版を作りながら、その公刊をめざしました。しかし、田中恭吉は『月映』の公刊を前に、結核のため故郷の和歌山に帰省しなければなりませんでした。彼は、それでもなお作品をつくっては仲間に送り、まもなく『月映』の出版が実現しましたが、病状の進んだ恭吉にはもうわずかな時間しか残されていませんでした。1915(大正4)年10月、彼は23歳の若さでその短い生涯を閉じました。恭吉の死後、『月映』の第7号は「告別」と題されて出版され、この雑誌は終刊となりました。三人が青春の夢を託した『月映』の作品群は、単に彼らの友情の証であるばかりか、それぞれの類まれな芸術的な感性と、新しい美術表現を創り出そうとする意欲にあふれる制作によって、日本の近代版画の歴史にとって忘れられないものとして高く評価されています。

 萩原朔太郎は、『月映』によって田中恭吉の画家としての才能に注目し、自らの処女詩集『月に吠える』出版のために、その挿画の制作を依頼していました。恭吉は病床にあって懸命にその制作に取り組みましたが、何点かのペン画を遺して逝ってしまいました。朔太郎の出世作となった『月に吠える』は、あらためて恩地が装幀を担当し、恭吉のペン画を挿画として1917年に出版されたのです。
 この展覧会は、詩と版画にその青春のすべてを捧げ、短い生涯を閉じた画家、田中恭吉の全貌を紹介する初めての本格的な展覧会です。また、これにあわせて公刊『月映』の全作品を特別公開します。

基本情報

[会期]

2000年7月15日(土)~2000年8月27日(日)

[会場]

愛知県美術館(愛知芸術文化センター10階)

[開館時間]

10:00~18:00
金曜日は20:00まで (入館は閉館の30分前まで)

[休館日]

毎週月曜日

[観覧料]

一般 1,000(800)円
高校・大学生 700(500)円
小・中学生 400(200)円
※()内は20名以上の団体料金

[主催等]

[主催] 愛知県美術館、日本経済新聞社、テレビ愛知

[後援] 愛知県・岐阜県・三重県・名古屋市各教育委員会

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