映像プログラム

第23回アートフィルム・フェスティバル

The 23rd Art Film Festival

 「アートフィルム・フェスティバル」は、実験映画やビデオ・アート、ドキュメンタリー、フィクションなどの枠にもおさまらない、映像表現の先端的な動向を紹介する特集上映会です。

 愛知芸術文化センターの開館記念日にあたる10月30日に前後して開催する今回は、勅使川原三郎が監督し山口小夜子らが出演した『T-CITY』(1993年)等を取り上げ、映像とパフォーミング・アーツの関係性について考察します。また「愛知芸術文化センター・愛知県美術館オリジナル映像作品」最新作として完成した、小森はるか『空に聞く』(2018年)を初公開するとともに、事件や事故に向き合うことで撮影されたドキュメンタリー作品を併せて上映します。

愛知芸術文化センター・愛知県美術館オリジナル映像作品 最新第27作初公開 小森はるか『空に聞く』

 美術館と劇場の複合文化施設である愛知芸術文化センターは、「身体」をキーワードとして映像作品を制作しています。これまでに作られた作品は、国際映画祭への出品や受賞といった実績を重ねてきました。(愛知県美術館所蔵。過去の作品は、アートライブラリーでも視聴できます。)平成29年度制作の最新作は『空に聞く』(2018年)。監督は、東日本大震災で被災した陸前高田で、津波で流失した店の跡地にプレハプを建て営業を続ける種苗店を取材したドキュメンタリー『息の跡』(2016年)で、高い評価を得た小森はるか。本作は、小森が引き続き陸前高田に寄り添うように撮った待望の新作で、同地で行われる災害FMの活動と、再生しつつあるコミュニティの姿を、繊細な感覚で掬い取っています。上映に合わせ小森監督を招きトークを行う他、関連する作品も上映します。

基本情報

[会期]

2018年10月26日(金)〜11月4日(日)

[会場]

愛知芸術文化センター12階
アートスペースA

[休館日]

10月29日(月)

[観覧料]

無料

[主催等]

愛知県美術館

上映プログラム

10月26日(金)

〈源流としての民俗芸能〉
17:00 吉田喜重『愛知の民俗芸能-聖なる祭り 芸能する心』 1992年、31分、ビデオ※
『愛知の民俗芸能-都市の祭り 芸能する歓び』 1993年、29分、ビデオ※
18:30 三宅流『究竟の地-岩崎鬼剣舞の一年-』(劇場公開版) 2008年、128分、ビデオ 作品提供:三宅流

10月27日(土)

〈同時開催〉 インター・カレッジ・アニメーション・フェスティバル(ICAF)2018
13:30 上映作品等の詳細はウェブサイト〈http://www.icaf.info/〉をご覧ください。

10月28日(日)

〈同時開催〉 インターリンク:学生映像作品展(ISMIE)2018
13:30 上映作品等の詳細はウェブサイト〈http://d.hatena.ne.jp/e_h_kenkyu/〉をご覧ください。

10月29日(月)

休館

10月30日(火)

〈ダンス、演劇を撮る〉
17:00 ジョナス・メカス『カップ/ソーサー/2人のダンサー/ラジオ』 1983年(撮影:1965年)、23分、16㎜(ビデオ上映) 出演:ケネス・キングほか※
17:30 ジョナス・メカス『営倉』 1964年、66分、16㎜(ビデオ上映) 共同監督:アドルファス・メカス 出演:リビング・シアター※
19:00 ベルナール・エベール『ルイスとサルバドールの犬』 1984年、5分、ビデオ※
『ラララ・ヒューマン・セックス・デュオ No.1』 1987年、7分、ビデオ 出演:ラララ・ヒューマン・ステップス※
『ルームス』 1988年、11分、ビデオ※
19:30 ベルナール・エベール『ベラスケスの小さな美術館』 1994年、53分、35㎜(ビデオ上映) 出演:ラララ・ヒューマン・ステップス ※

10/31(水)

〈暗黒舞踏との交錯〉
15:00 長野千秋『O 氏の肖像』 1969年、65分、16㎜(ビデオ上映) 出演:大野一雄*
16:30 ビデオインフォメーションセンター 手塚一郎 『ラ・アルヘンチーナ頌』初演 1977年、70分、ビデオ 演出:土方巽 出演:大野一雄*
18:00 エディン・ヴェレツ『ダンス・オブ・ダークネス』 1989年、55分33秒、ビデオ 出演:大野一雄、麿赤兒、大須賀勇ほか※
19:00 米倉伸『たおやかに死んでいる』 2017年、76分、ビデオ 出演:麿赤兒、伊藤キムほか ◎監督来館予定 作品提供:米倉伸

11/1(木)

〈音楽創造=映画〉
16:30 三宅唱『THE COCKPIT』 2014年、64分、ビデオ 出演:OMSB、Bim ★
18:00柴田剛『ギ・あいうえおス - ずばぬけたかえうた-』 2010年、56分、ビデオ★
19:00 『ギ・あいうえおス 他山の石を以って己の玉を磨くべし』 2016年、86分、ビデオ 出演:ヒスロムほか 山口情報芸術センター[YCAM]委嘱作品/YCAM Film Factory vol.1 ◎監督来館予定 作品提供:柴田剛

11/2(金)

〈美術系パフォーマンスと映像〉
17:30 ジョナス・メカス『イン・ビトゥイーン』 1976年(撮影:1964 – 68年)、53分、16㎜(ビデオ上映) 出演:サルバドール・ダリほか※
18:45 ビル・ヴィオラ『四つの歌』 1976年、33分、ビデオ※

〈追悼:ゼロ次元〉19:30 金井勝『無人列島』 1969年、55分、16㎜ 出演:串田和美、ゼロ次元ほか 作品提供:かない勝丸プロダクション

11/3(土)

〈愛知芸術文化センター・愛知県美術館オリジナル映像作品最新第27作初公開〉
11:00 オリヴィエ・バビネ『スワッガー』 2016年、84分、ビデオ 作品提供:アリアンス・フランセーズ愛知フランス協会、アンスティチュ・フランセ
13:30舩橋淳『放射能』 2013年、35分、ビデオ★
小森はるか『根をほぐす』 2018年、18分、ビデオ 作品提供:小森はるか
14:30 小森はるか『空に聞く』 2018年、66分、ビデオ 愛知芸術文化センター・愛知県美術館オリジナル映像作品最新第27作 ◎上映終了後、小森はるか監督によるトークを行います。

11/4(日)

〈ダニエル・シュミット× 大野一雄〉
15:00 ダニエル・シュミット『KAZUO OHNO』 1995年、15分、35㎜ 出演:大野一雄、大野チエ★
『稽古場の大野一雄』 1995年、13分、ビデオ(撮影:16㎜) 旧題:『ダニエル・シュミット、レナート・ベルタ撮影による未使用フィルム』*

〈勅使川原三郎の映像世界〉
15:45 勅使川原三郎『ケシオコ』 1993年(撮影:1990年)、10分、35㎜ 撮影:荒木経惟※
『T-CITY』 1993年、28分、35㎜  出演:山口小夜子、宮田佳ほか★

〈表現者・山口小夜子の軌跡〉
16:45 松本貴子『氷の花火 山口小夜子』 2015年、97分、ビデオ 作品提供:(株)コンパス
◎上映終了後、山口小夜子と親交のあった黒田育世(BATIK主宰、振付家、ダンサー)の講演を行います(共催:愛知県芸術劇場)

★:愛知県美術館蔵 ※:アートライブラリー蔵 *:アートライブラリー蔵(大野一雄ビデオ・ライブラリー)

 「愛知芸術文化センター・オリジナル映像作品」は、文化情報センターによる実験的な映像作品の制作プログラムとして1992年の開館時にスタート。センター内の組織改編に伴い、2014年より、美術館が映像作品として収蔵するとともに、制作を継承しています。

見どころ

特集:「映画は如何にパフォーマンスを撮るか?」

 映像メディアが演技する人間をどうとらえるかは、映画初期のリュミエールやメリエスの時代から、大きな問題として浮上しています。平凡な日常の情景を据えっぱなしのカメラで撮っただけに見えるリュミエールの作品には、一方で起承転結のドラマが内包され、演劇的な側面があることも指摘されています。また、今日のCGやVFXの原点といえるトリック撮影の創始者・メリエスの作品は、奇術や魔術など舞台芸の記録から出発し、その原理を映像において応用、発展させたものといえるでしょう。

 生身の人間が舞台で演じる迫力や実在感が、機械的な記録=映像に写し取る段階で希薄化し、喪失されてしまうのは必然といえます。映像表現の展開は、編集や特撮的な技法を用いてそれらをどう補ってきたかの歴史である、ともいえるでしょう。しかしながら、舞台を記録に徹して撮れば退屈といわれ、編集やエフェクトを加えれば舞台の空気が消えると難じられてしまう。つまり、映像とパフォーマンスの間では、常に相反する要素がせめぎ合ってきたのです。しかしこの領域では、ジョナス・メカスの『営倉』(1964年)のように、演劇公演を切れ目なく丸ごと撮影しながら、その実在感や生気までも映像化するような、奇跡的な傑作が生み出されてきたのもまた事実です。

 本特集は、この古くて新しい永遠のテーマを改めて取り上げ、様々な作家がこの問題にどう取り組んできたかをたどるものです。

 パフォーマンスの源流であり、芸術の根源ともいえる民俗芸能を扱った吉田喜重『愛知の民俗芸能』二部作(1992-93年)から、舞踏映画の代表作・長野千秋『O氏の肖像』(1969年、出演:大野一雄)や、コンテンポラリー・ダンスとビデオ・アートの交点に生まれたベルナール・エベール『ラララ・ヒューマン・セックス・デュオ No.1』(1987年、出演:ラララ・ヒューマン・ステップス)、音楽制作の現場を取材し、その過程から立ち上がる身体性を掬い上げた三宅唱『THE COCKPIT』(2014年、出演:OMSB、Bim)、さらに美術におけるパフォーマンスの映像化という側面を持つビル・ヴィオラ『四つの歌』(1976年)まで、パフォーマンス× 映像と
いう試みから生まれた、多彩な作品に触れられるでしょう。

 また、当センター「オリジナル映像作品」である柴田剛『ギ・あいうえおス -ずばぬけたかえうた-』(2010年)に続く作品として、山口情報芸術センター[YCAM]が制作した『ギ・あいうえおス 他山の石を以って己の玉を磨くべし』(2016年)や、卒業制作ながら麿赤兒や伊藤キムを出演させた意欲作・米倉伸『たおやかに死んでいる』(2017年)など、最新の話題作を取り上げる他、近年、主要メンバーの岩田信市と加藤好弘が亡くなった、
1960年代の前衛的なパフォーマンス・グループ「ゼロ次元」が出演する、金井勝『無人列島』(1969年)を、〈追悼:ゼロ次元〉として上映します。

 さらに、振付家・ダンサーが自らのコンセプトを映像表現により具現化した事例として、勅使川原三郎の初監督作品『T-CITY』(1993年)を上映します。

 最終日となる11月4日(日)のプログラムとして〈表現者・山口小夜子の軌跡〉を行います。山口小夜子は今日の「スーパーモデル」の先駆的存在として、国際的に活躍したことで一般に知られていますが、後年、その表現の幅を広げ、ダンスやオペラ、映画の他、若手アーティストとの実験的なパフォーマンスにも積極的に取り組みました。こうした、山口小夜子の知られざる側面を掘り下げた、松本貴子の意欲的なドキュメンタリー『氷の花火山口小夜子』(2015年)を上映します。また、山口小夜子と親交のあった黒田育世(BATIK主宰、振付家、ダンサー)の講演(共催:愛知県芸術劇場)を行い、本特集を締め括ります。

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