[ 先生のためのプログラム:鑑賞学習実践例 ] 「鉛筆デッサンをしよう」

対象作家・作品 アンドリュー・ワイエス
《火打石》、《松ぼっくり男爵》、《クリスティーナの世界》(習作)、《アラベラ》、《そよ風》(習作)、《雪まじりの風》(習作)
実施日 平成21(2009)年1月25日(日)
実践タイトル 鉛筆デッサンをしよう。
ねらい ワイエス作品を鑑賞し、作品模写や静物デッサンをすることによってより深い鑑賞体験を促す。
準備物 鉛筆、練り消しゴム、カッター、ゴミ箱、画用紙(静物デッサン用)、対象作品の輪郭線が印刷された画用紙(模写用)、模写をする対象の作品画像(A4)、画板
対象学年 高校生
指導の構成(流れ) 作品鑑賞 → 制作 → 作品鑑賞 → 感想記入
参加人数 33名
指導者氏名・関係スタッフ 指導教員:竹田敏子(衣台高校)、竹内千恵(愛知工業高校)、高橋承一(岩倉総合高校)、石原則和(千種高校)、野々山勝彦(碧南高校)、記録・サポート:学生アシスタント

プログラムのねらい

高校生はワイエス作品を鑑賞して、作品制作の追体験を行なった。つまり、作品の制作過程にある素描や水彩を味わい、それらの模写や同じモチーフのデッサンを試みることで彼の制作を理解し、鑑賞を深め創造を追体験するものであった。

プログラムの内容(実際の様子)

  1. 説明と最初の鑑賞 13:00~
    まず、自由にワイエス作品を30分鑑賞した。あらかじめ、模写をするか、絵の中の自然素材のモチーフのデッサンをするか、決めさせて鑑賞に入らせる予定だったが、当日はそんな余裕はなく、とにかく場内に入っていった。ワイエスを早く見たいという生徒らの気持ちに応えるような流れだったと思う。
  2. 制作 14:00~
    模写は「そよ風」「雪まじりの風」などを、モチーフのデッサンでは松ぼっくり、石、木の枝をそれぞれ選んで制作した。熱心に描き込んでから会場に持ち込み、実物の作品と見比べて意見交換をした。教師も一緒に話し合って作品について鑑賞を深めた。
  3. 続きの制作と感想記入 15:00~
    さらに、制作の机にもどりもう一度描き込んだり、モチーフを変えてデッサンしたりと、生徒達は納得がいくまでそれぞれの制作を楽 しんだ。そして、用意された台紙に貼り、感想を書いた。
  4. 作品の展示、その後自由鑑賞(流れ解散) 16:00~
    それぞれが、ワイエスについて作品のみならず彼の人生、生き方、ものの見方なども感じ取り深い鑑賞の糸口を掴んだと思う。

今後の課題

今回は、準備の段階でかなり、担当教員間での話し合いが密に繰り返された。また、当日の時間の流れ等も先に他のグループが行って混乱があったとの報告から、ゆったりとさせたり、事前準備の時間を多く取ったりしたことが幸いした。

内容的には、概ねこちらのねらいは達成していたが、今後の課題としては、生徒にとって「来て良かった、ワークショップを経験して、何か得られた」「美術館で何かあったらまた参加したい」と感じることができたかどうかを見落とさない事、 生徒の反応をよく見て、進める事、例えば現場での変更もありということで 余裕のあるスケジ ュールを企画することだと思う。また、教員の感覚を知らず知らずのうちに押しつけて、誘導するような鑑賞会にならないとも限らないので、常に生徒の生の感覚を大切にしあくまで生徒が主役の流れで企画、立案していきたい。会場の雰囲気に飲まれることなく、冷静に見ていくことも忘れてはならない。さらには、今回他の一般のお客様の鑑賞に一部邪魔をしていたような場面もあるので、会場の中で大勢の高校生を動かす時には配慮を持って、無理のないプランを立てたいと思う。

ワイエス展を鑑賞。ポイントとなる作品については先生の解説があります。
模写グループは、画板に画用紙と作品コピーを並べて貼り、制作を進めます。
デッサン中には、先生からの簡単な指導もありました。
机の上に松ぼっくりを置いて、静物デッサンに挑戦中です。