[ 先生のためのプログラム:鑑賞学習実践例 ] 「カフェテラスの絵に色をぬって 内容を見つめよう」
対象作家・作品 | 国吉康雄 誰かが私のポスターを破った 1943年 |
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展覧会名 | 国吉康雄展 2002年 |
実践タイトル | だれが私のポスターを破ったの? |
ねらい | 対話を通して,作品のナゾにせまろう |
対象学年 | 小6 |
指導の構成 (流れ) | 学校 1時間 鑑賞 美術館 1時間 鑑賞 学校 1時間 鑑賞 |
準備教材 | 国吉康雄展ポスター(掲示用) チラシ(児童配付用) |
学校名 | 豊明市立豊明小学校 |
教諭名 | 小崎真(2002年度) |
プログラムのねらい
- 作品から見つけたことや感じたことをもとにしながら,作品の内容を想像力豊かに読み取ることができる。
- スケッチ版をもとにして,配色を工夫しながら水彩絵の具で着色することができる。
- 作品をもとに想像力を働かせて,グループで協力しながら「お話づくり」ができる。
- 意欲的に作品の鑑賞に取り組み,ゴッホや他の作家の作品を鑑賞しようとすることができる。
プログラムの内容(実際の様子)
『夜のカフェテラス』は,ゴッホが夜の町にキャンバスを持ち出して描いた作品である。星がまたたく夜に,カフェのガス灯がテラスと石畳を美しく照らし出している。その情景が独特の鮮やかな色づかいで叙情的に描かれている。
この作品から子どもたちに気づかせたいのは「色彩」の素晴らしさである。そこで,最初は作品を提示せず,まずはゴッホ自身が描いたスケッチ版を紹介する。そのイメージを大切にさせながら水彩絵の具で着色させた。次に,油絵で描かれた色彩版と比較することで,子どもたちの色や情景と,ゴッホの描いた色や情景との違いに気づかせることにした。
まず,スケッチ版の作品に着色をすることで,子どもたちはスケッチから感じ取った印象を水彩絵の具で着色していった。スケッチ版から受けたイメージをもとにしているため,「石畳」が「草畑」になっていたり,「昼間の様子」になっていたり,「夜空に花火をあげる」という子もいたが,それぞれが持っている知識や経験を頼りに,楽しそうに着色を行った。
対話型の授業では,スケッチ版から気がついたことを発表させ,「どうやって色をぬったらよいか悩んでいる作者にアドバイスをしよう」と投げかけた。子どもたちは自分たちが着色した経験を生かし,「人が少ないから,もっとたくさんかいてにぎやかにするといい」「自然が少ないから,もっと木や草をふやすといい」「まだ,朝か昼か夕方か決まっていないみたいだから,早く決めるといい」などの意見が出された。
「作者が色をぬった作品が完成して,美術館に来ているよ」と投げかけると,「見に行きたい」と声があがり,実際に美術館で作品をみるになったが,子どもたちが着色したものとゴッホの着色したものとを比べることで,スケッチ版と完成作品の違いや,色彩について考えさせることができた。
今後の課題
『夜のカフェテラス』を,子どもたちは自分たちが着色したイメージと比べながら,細かく見ていることが分かった。特に,「光が金色で描かれている」「とてもきれい」「星や明かりが夜の雰囲気を出している」など,ゴッホが用いた「色彩」に心を奪われていることが分かった。
課題としては,作品と子どもたちとの結びつけ方,関わらせ方を指摘できる。今回は,スケッチ版を提示したが,他にも,ゴッホの他の作品から入る方法,別の作家の作品から入る方法,エピソードから入る方法などが考えられるが,子どもたちの実態に合わせて,導入を工夫し,子どもたちが進んで作品に関わっていくことができるようにする必要がある。
当日の様子