[ 先生のためのプログラム:鑑賞学習実践例 ] 「かんじたことを「あいパック」を使って)」
対象作家・作品 | 愛知県美術館鑑賞学習補助ツール「あいパック」 ポスター(マックス・エルンスト《ポーランドの騎士》) アートカード40枚 |
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実践タイトル | かんじたことを(「あいパック」を使って) |
対象学年 | 小学校1年生(全学年可能) |
準備教材(教師) | 「あいパック」
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学校名 | 尾張旭市立渋川小学校 |
教諭名 | 岡島叔子 (2012年度) |
実践のねらい
本単元は、児童が、作品から見たことや感じたことを言葉で表現したり、友達の意見を聞いて考えたりと、楽しみながら様々なアプローチで作品を鑑賞することができるような教材を通して、鑑賞の能力を身に付けることをねらいとしている。
「あいパック」は、愛知県美術館のコレクションから児童に親しみやすい作品を選択しており、それら作品のポスターやカードを使用して、誰でも手軽に学校で鑑賞学習を行えるツールとして制作されている。そこで、ポスターを見て対話式鑑賞をした後、「アートカード」による共通点を見つけたり、好きなカードを選んだりする活動を取り入れることで、作品の形や色、イメージなどに気付かせたいと考えた。また、感受性豊かな低学年の頃から作品のよさに触れ、楽しく鑑賞しながら、友達の話を共感的に聞く姿勢とコミュニケーション能力を身につけさせることも大切に指導していきたい。
授業の様子
美術館にある作品の鑑賞授業が、教室で手軽に行えるようなツールがあったら、という要望から作られた「あいパック」を使用して、小学校1年生に鑑賞授業を行うことにした。
初めに《ポーランドの騎士》のポスターを見せて、何がかかれているか、どんな感じがするかなどを話し合った。ここでは、題名・作者は簡単にふれる程度にし、画面そのものに注目させるようにした。そして、どんな感じ方も否定せず、自由に話し合える雰囲気を作ることに留意したところ、児童は、見つけたものや感じたことを次々に発表した。また、特に注目してほしいところには、虫めがねツールを使用して注目させた(授業風景1)。
次に、「アートカード」を使ったゲーム「仲間みつけをしよう」をした。グループごとにカードを1セット(40枚)ずつ配布し、共通点を見つけて順番に発表させた。ここでは、一人ひとり見方や感じ方がちがっても良いことや、違ったとらえ方や感じ方も大切なことに気付かせ、見ることの楽しさを味わえるようにした(授業風景2)。
次の「お気に入りをみつけよう」では、全部のカードの中から、自分の好きな作品を選ばせ、グループの友達にその理由も具体的に話させた。その際、国語で学習した文章を思い起こさせ、簡単な文章「この作品がすきです。どうしてかというと、○○だからです。」の見本を示して練習させた(授業風景3)。さらに、全員の前で発表させたところ、多くの児童が、自分の言葉で積極的に発表することができた(授業風景4)。
最後に授業の感想を発表させたところ、たくさんの作品を見ることができて楽しかった、お気に入りの作品が見つかり嬉しかった等、本日の活動を振り返ることができた。本校では2年生時に、校外学習で愛知県美術館に鑑賞学習に出かけることになっているので、これらの作品は「愛知県美術館」にあることを知らせ、本物に会うのを楽しみにさせ、授業を終えた。
感想および今後の課題
はじめは、小学校1年生が、作品を見て感じたことを、どこまで語ることができるのか、という不安があった。ところが、授業が始まると、感じたことに決まった答えはないんだということが分かり、児童は感じたことを自由に言葉にしたり、友達の意見に耳を傾けたりする姿を見ることができた。また、虫めがねツールは、ポイントを絞って注目させたり、友達がみつけたものを全員で共有したりするときに、大変有効であった。
最後に、授業の感想を発表する場面で、「お気に入りで同じ絵を選んでも、人によってちがうことを言ったり思ったりしているね。」という児童の言葉が出た。「人それぞれ見方が違っていいんだ。」という鑑賞学習の楽しみに気付かせることができたと感じた。
鑑賞の評価は、今後の課題である。言葉にはならない沈黙やため息も忘れてはならない。言語で表現する力と、感じる力、鑑賞する力とが、混同されることのないようにしたいと思う。また、子ども達が感じ取った形や色、イメージなどを今後の表現活動にも活かしていけるような指導をしていきたい。