学校と愛知県美術館による鑑賞実践例

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作者のおもいをはだで感じよう
対象作家・作品 戸谷成雄      地霊      1990年
実践タイトル 作家のおもいをはだで感じよう
ねらい 地霊にのってみたよ
対象学年 中高学年
実践の全体構成(流れ) 例:
学校         1時間       鑑賞
学校         1時間       制作
美術館     1時間       鑑賞
準備教材 チェーンソー
学校名 元 弥富市立白鳥小学校
現 愛西市立草平小学校
教諭名 浅尾知子(2003年度)
 

【当日の様子】

チェーンソーの振動を肌で感じて

くすのきの木くずや香りを体で感じて

愛知県美術館戸谷成雄展見学

空に向かって

【実践のねらい】

 本校では、鑑賞活動の対象を以下のように考えて実践をすすめてきた。(鑑賞活動についての詳細は、指導案参照)

[鑑賞活動の対象]

  • 世界の美術作品…絵画・デザイン・彫刻・工芸・建築など
  • 子どもの作品…自分や友だち・世界の子どもたちの作品
  • メディアに関わる作品…映像・写真・絵本・漫画・CGなど
  • 生活や遊びに関わるもの…建造物・日用生活品・衣服・民具・玩具など
  • 行事や祭りに関わるもの…祭りの人形やお面・衣装・正月や節句の飾りなど
  • 自然的なもの…草花・木・石などの自然物、昆虫や鳥などの生き物、自然現象など

 『百聞は一見にしかず』の言葉のとおり、前年度までに実施した美術館見学においては、本物の作品とふれあえたときの子どもたちの驚きや喜びが伝わってきた。本物の作品から、感じ取る感動は、大変大きなものであり、子どもたちの胸の高鳴りが伝わってきた。しかし、前年度までの美術館見学では、企画展の内容に絵画が多かったため、違う分野の作品にふれさせたいというねらいのもと、現代アート、彫刻といった抽象的な作品が多い「戸谷成雄展」を見学する計画を立てた。

【実際の様子】

 子どもたちは、彫刻に関する制作過程をほとんど目にしたことがない。完成品のみを見ているだけでは、子どもたちのおもいにも広がりがないのではないか・・・と懸念される。特に県美術館での『戸谷成雄展』では、初めて出合うチェーンソーを使った作品である。非常に大きな材料を取り扱ったり、危険が伴ったりすることで、制作にとてもエネルギーが必要である。また、作者自身も、作品ひとつひとつに熱いおもいやメッセージをこめている。そういったことに、自然な形で気づかせたいという願いから、愛知県美術館の学芸員の方から配慮で、実際にチェーンソーを使っての制作を彫刻経験のある研修生の方(愛知教育大学大学院生 宮城島さん)に見せていただける機会を持つことができた。
 大きな音とともに回転するチェーンソーの鋭い歯、吹き上がり、飛び散るおがくず・・・。制作者の真剣な眼差し。暑い日差しの中で、子供たちにもその熱いおもいが確かに伝わっていった。
 実際に材料の木を持たせてもらったり、チェーンソーの振動を確かめさせてもらったり、子どもたちなりに制作の大変さを感じ取っていた。あたりに漂うかぐわしい木の香りも体全体で感じ取ることができ、貴重な体験となった。
 その後、作品は、『空に向かって』と名づけられ、白鳥小学校にプレゼントしていただけることになった。子どもたちは、実際に木の香りや触感を確かめながら、五感を働かせて鑑賞できる場とすることができた。
 戸谷成雄展見学では、初めて目にする分野の作品や想像以上のスケールに、感嘆と感動の声が聞かれた。自分の背丈と比べて作品の大きさを体感したり、実際に作品のなかに入ってみたり、キャプションを見て話し合ったりする光景が見られた。また、「地霊」という作品の上に乗せていただくという貴重な体験もできた。体験後「(作品の上に)乗ったとき、吸い込まれるような感じがした。」という感想が聞かれた。新しい分野の作品にふれたことで、子どもたちのおもいにも広がりも感じられた。

【感想および今後の課題】

 初めてふれる抽象的な作品は、子どもたちに鮮烈な印象を残した。また、学芸員さんの解説は大変わかりやすく、子どもたちも興味深く聞くことができた。作家や作品について熱心に語ってくださった内容は、子どもたちの心にも深く刻まれた。見学後は、新聞にまとめるなど活動にも広がりがもてた。作品によっては、触れたり上に乗ったりできるものがあり、五感を働かせて鑑賞をすることができ、作家からのメッセージを肌で感じることができた。形のない自分のおもいを形で表すという抽象的な作品についても理解を深めることができた。今回は特別に作品に触れることができたが、本来は触れることができるものは少ない。芸術作品に対するマナーは、きちんと知らせていかなければならない。