学校と愛知県美術館による鑑賞実践例

指導案のダウンロード

ポロックを読み解く(高校生対象)
対象作家・作品 ジャクソン・ポロック
展覧会名 生誕100年 ジャクソン・ポロック展
実践タイトル ポロックを読み解く
ねらい ポロック以前の絵画のあり方とポロック以降のそれとの違いを鑑賞を通して感覚的にとらえさせる。
対象学年 高校生(全学年)
指導の構成
(流れ)
[ 学校 ] 40分 事前学習
[ 美術館] 
 (1)自由鑑賞(40分)  (2)グループ鑑賞(15分)
 (4)グループ意見交換(20分)  (5)全体発表(50分) 
準備教材 事前学習資料。ワークシート。付箋。図版教材
学校名 愛知県岩倉総合高校
教諭名 高橋承一、上西朱美、尾関健治(岩倉総合高校)、青島やよい(菊里高校)(2011年度)
 

【実践のねらい】

 ポロック以降の現代美術を鑑賞する時、作中にモチーフが存在しない作品(あるいは描かれたモチーフ自体に重要な意味がない作品)に出会う事がある。その時、私たちは何を拠りどころにして鑑賞をすればよいだろうか。また、鑑賞を妨げる障害(美術作品に関する既成概念や鑑賞の経験不足)が私たち自身の内にあるのだろうか。
 事前学習の印象と会場で実物を前にしての比較や、他者の感想との比較を通して、現代芸術の読み解きについて考えさせたい。

【実際の様子(授業の流れは指導案参照)】

1.事前学習(学校にて・生徒を8グループに分ける)
(1)ポロックの生い立ち、当時の社会状況等を学習する。(各グループに1作品を課題として割り振る。)
(2)割り振られた図版資料から作品の第一印象を付箋に書き、グループ毎に台紙に添付し、感想をまとめる。
2.鑑賞(美術館)
(1)自由鑑賞
(2)グループ鑑賞:課題作品の周辺にグループ毎に集まり鑑賞。ワークシートの設問を書き込み意見交換をする。
(3)グループ意見交換会(アートスペースEF):事前学習時の第一印象と、実物を鑑賞した感想をまとめ、グループ内で意見交換会を試みる
(4)全体発表:グループ内で出された感想、意見をまとめ、全体で発表会を実施する

【課題にした作品】
 「西へ」(1934-38年頃)
 「誕生」(1941年頃)
 「ポーリングのある構成II」(1943年)
 「インディアンレッドの地の壁画」(1950年)
 「ナンバー11, 1949」(1949年)
 「カット・アウト」(1948-58年頃)
 「ナンバー9, 1950」(1950年)
 「ナンバー8, 1951 黒い流れ」(1951年)

3.まとめ(学校にて・個々が書いたワークシートのまとめ部分を集約し、プリントにし、参加生徒に配布)
・プリントに記されている他者の感想や考えを読み、ポロックの作品について再考してみる。

【感想および今後の課題】

 80名近くの生徒が参加し、Tグループ10名の8グループに分かれて鑑賞、意見交換を実施した。グループ内の進行は各2名の生徒を配置した。
 鑑賞とは、積極的に"見よう"とする鑑賞者と作品との間に湧き起る情意表現である。教師主導の学習メニューに沿って自分の答えを見つけていくのではなく、生徒相互のコミュニケーション活動によって個々の鑑賞が深まっていく。「10人が協同で一点の作品に取り組んでみよう」という仕組みを設定した。
 ファシリテーターを担った生徒には、「マニュアル」をヒントにさせ、生徒間の意見交流の「場」を生み出させようと試みた。
 当日、展覧会場では様々なグループ鑑賞の状態が見られた。このような形の鑑賞会を何回か経験している3年生はマニュアルを応用しつつ、自分達なりの意見交換の時間を創出していた。一方で、マニュアルを台本として進めているグループでは、ワークシートの書き込みを読み合うだけの形式的な意見交換に終始していた。「鑑賞活動のモチベーションを高める」ファシリテーターになる生徒の支援、育成の重要さを感じた。
 全てのグループが同じ様に発表する試みには無理があったように思う。1つの発表に対して意見のやり取りを可能にする時間的配慮が必要であった。計画の段階で、参加数、作品数等の調整が不可欠である。