学校と愛知県美術館による鑑賞実践例

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ワイエス・ワーイ!
対象作家・作品 アンドリュー・ワイエス
《松ぼっくり男爵》、《ジャック・ライト》、《747》、《農場にて》
実施日 平成21(2009)年1月25日(土)
実践タイトル ワイエス・ワーイ!!
ねらい ワイエスの絵を見て、物語をつくってみよう
対象学年 小1−3
準備物 ペン・色鉛筆・ワークシート・探検バッグ
指導の構成
(流れ)
友達作りゲーム(グループ分け) → グループで4作品を制作順に鑑賞。物語を作る → 感想を書く → 再度、鑑賞および所蔵作品展鑑賞
参加人数 18名
関係スタッフ氏名 指導教員:浅尾知子(草平小)、岡島叔子(東栄小)、角谷俊人(一色東部小)、竹内清美(元教諭)、中山知恵子(上野間小)、長谷川厚一郎(千秋東小)、藤田雅也(名古屋経済短大)、記録:小崎真(双峰小)、学生アシスタント
 

【当日の様子】

作品を見比べながらどんな部分が違うのか鑑賞していきます。

1つの作品を前に、詳しく作品を鑑賞し物語を組み立てていきます。

作品を見て、気がついたことや想像した物語などをワークシートに書き込んでいきます。

所蔵作品展での動物ビンゴの様子です。展示作品に描かれた動物を探します。

【プログラムのねらい】

 小学校1〜3年を対象にした本プログラムのねらいは、ワイエスが同一テーマで制作したスケッチ、水彩、テンペラを順に子どもたちに鑑賞させながら作品の内容を語らせ、個々の「物語」を作らせていくことである。

【プログラムの内容(実際の様子)】

 子どもたちにとって「美術館に出かける」ということ自体が、固有の経験であり「物語」であると考えると、今回の「ワイエス・ワーイ!!」は、招待状(ハガキ)が手元に届き、「しょうたいじょうがきたよ!」「わいえすって何?」「びじゅつかんってどこ?」といった子どもたちの「!」「?」からスタートしていると捉えることができそうである。
 子どもたちは、美術館に到着すると招待状と引き替えに、まるでゲームの世界に入るように、名札、地図、ワークシートというアイテムを受けとり、グループの仲間と出会い、ワークシートに示された作品を美術館の中から見つけ出していった。
 《農場にて》《ジャック・ライト》《747》《松ぼっくり男爵》を4つのグループで1作品ずつとりあげたが、グループごとにアプローチは異なった。《農場にて》では、案内役が作品に描かれた人物のポーズを再現し、描かれた人物をよく見ることを促した。《747》では「まちがい探し」のように作品の違いを見比べさせ、題名をキーワードに内容の読み取りを深めさせた。《松ぼっくり男爵》では「松ぼっくり」と自分の生活経験を結び付けさせながら、作品の世界へと誘っていった。《ジャック・ライト》では、作品に描かれているものを見つけさせながら、描かれたときの「季節」「時間」などを想像させた。グループごとにワークシートをつくり、制作順に並べられた作品に思ったことを書き込ませていった。本ワークショップでは、「作品理解」よりも「子どもから見た視点」をトークの流れを重視したが、《747》《ジャック・ライト》という題名の意味を考えさせ、本当の意味を紹介することで「作品の世界観」を少しずつ意識させていけるようにした。
 4つのグループの個別のアプローチにより「ワイエスが作品を通して語っている物語」と「子どもたちの経験世界」が結び付けられ、グループ固有の、そして一人一人固有の「物語」が紡ぎ出されていったことが、美術館での様子や子どもの感想から分かった。
 ワイエス展鑑賞後は、所蔵作品展で作品に描かれた動物を探すゲーム[アート・ビンゴ]を楽しんだ。低学年の子どもたちは、「かくれんぼ」のように「探す」という活動を通して美術館の作品に関わったようである。最後に、子どもが「お気に入りの作品」を1つ選んで簡単に各自でスケッチをさせた。
 後日、美術館から送られてきたワークシート、記念写真(ワークショップ終了後にグループごとに撮影したもの)、メッセージカードを子どもたちが受け取ったことで、子どもたちの「物語」はワークショップを懐かしく思い出すというエピローグを迎えるわけだが、「もう一回みたい」という声が参加した子どもからあがったことから、それぞれの「ワイエスの作品との物語」は今回のワークショップから始まったばかりと言えるかもしれない。

【今後の課題】

 今回のワークショップ「ワイエス・ワーイ!!」は、子どもたちが作品から見つけたり考えたりしたことを言語化させたことで、作品の内容を個々で広げられたことが成果として考えられる。しかし、中には作品内容の記述に留まって、「物語づくり」に至らない子どももいた。また、子どもが感じた印象や感想を言わせるだけでは作品鑑賞の世界を深めることはできないので、「案内役の大人がどのような問いかけを行い、作品世界に導いていくのか」という課題が残された。また、「物語」をつくったあとに、その内容を互いに聴き合う共有化の場面が設定されていなかったことも課題である。例えば、紙芝居形式でお互いの「物語」を見合うことで振り返ることができる。学校で行う学習とは異なり、美術館でのワークショップは一期一会の活動であることを考えると、「限られた時間の中で、子ども同士がお互いの物語をどう経験するか」という視点が重要となる。
 また、今回のワークショップを「子どもにとってのリアル(現実)な経験」としての視点から分析し振り返ることによって、「子どもにとって本当はどのような経験だったのか」ということを明らかにし、ワークショップの方法論のみならず、その意義について考察する機会としたい。